研究概要 |
この研究の大きな目的は,質・量ともに決して見劣りすることのない日本の考古地磁気データを,国際的な基準に合うように整えることである.それによって過去2000年間の地球磁場変動を研究するために必要不可欠である東アジアのデータベースを充実させ,地球磁場研究および考古地磁気学的年代推定に資することである。そのためにまずすべきであると考えたことは,日本の考古地磁気データの核をなしている大阪府南部の須恵器古窯の大遺跡群である陶邑から約40年前に得られた膨大なデータを再整理し,必要であれば保存されてきた試料に対して段階交流消磁を施して再測定することであった.陶邑試料の再測定は平成21年度にノウハウがほぼ確立できたので,以後着実に実施してきた.今年度は協力者の熊本大の渋谷教授の研究室でも併行して行えるようになった.今年度岡山理科大で測定できた窯跡は6基分であった. また,これまでに科研費報告や発掘報告書などで公表されてきた考古地磁気方位のデータベースやデータを再検討し,とくに年代がはっきりしたデータをまとめた新データベースを構築した.さらにこのデータベースを用いて,日本における過去2000年分の地磁気変動標準曲線を作成した. 本研究をスタートしたときに,将来的には残留磁化方位だけでなく,陶邑試料の古地球磁場強度の推定も行えるようにしたいと考えていた.国際的なデータベースの規格に合わせるためにも必須のことであり,そのため高知大の山本博士の協力を得て基礎的な研究も進めてきた。今年度は,古地球磁場強度推定の基準とするために,1972年に行った須恵器登り窯の復元実験で得た試料を用いることに思い至った.幸い試料を発見でき実験を開始した.この研究はまだ進行中であるが,須恵器古窯の試料が古地球磁場強度の推定に適していることが示されつつある.
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