SiC表面分解法によるカーボンナノチューブ(CNT)/SiCヘテロ接合界面の物性解明に向けて、放射光を用いた高分解能光電子分光測定による界面電子構造の評価を行った。光電子分光測定の結果、本手法で作製したCNTの光電子スペクトルはフェルミ端を示し、金属的であることがわかった。これは、生成するCNTが比較的直径の太い多層CNTであるためと考えられる。また、SiC表面にカーボンナノキャップ層を形成した試料を作製し、価電子帯上端と内殻準位の結合エネルギー測定を行い、CNT/SiCの界面バンドアライメントの決定を行った。この結果、本界面が界面に障壁をもつショットキー型の接合を形成している可能性があることがわかった。電気的特性評価による接合界面の電子構造決定に関しても研究を進め、CNT、SiCそれぞれの表面に対して、低抵抗の電極作製技術の確立を行った。 一方、CNTの生成メカニズムの解明に向けて、放射光を用いたX線吸収スペクトルのその場測定を行った。CNT生成中のCK吸収端近傍の微細構造の、入射光の偏極依存性を測定することで、CNT生成初期段階である、カーボンナノキャップが形成される過程における、カーボン間の結合方向の変化を直接測定することに成功した。本実験結果は、以前申請者らが提案したナノキャップ生成モデルに矛盾しない。 さらに、CNT構造制御に向け、生成条件をより精密に制御するため、新たにCNT生成用の超高真空加熱炉の設計と製作を行った。昨年度内に装置の立ち上げが終了し、現在、新装置を用いたCNT生成を開始している。
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