近年、石川県の河北潟周辺水域には北米南部原産のチクゴスズメノヒエ(Paspalum distichum L. var. indutum)が広がり、場所によっては浮島状の大群落を形成している。この在来植物では見られない浮島群落がどのような環境を形成し、そこにどのような動物相が保持されるようになるか調査をおこなった。生育期間中の浮島群落の溶存酸素量は夜間には低下するが、昼間は予想とは異なり常に高い状態で保たれていた。これはチクゴスズメノヒエの根系から供給されたものではなく、主に付着藻類の同化に伴うものであった。動物群集は抽水植物群落や浮葉植物群落よりも魚類やエビ類など比較的大型の動物現存量が高かった。沈水植物群落が存在しない河北潟において、水中に密に広がる匍匐枝と不定根は大型動物にとっての代替的な生息空間となっていた。
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