研究課題/領域番号 |
21510251
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
池谷 祐幸 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所・品種育成・病害虫研究領域, 上席研究員 (10391468)
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研究分担者 |
片山 寛則 神戸大学, 大学院・農学研究科, 講師 (50294202)
植松 千代美 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (30232789)
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キーワード | 生物多様性 / 保全生物学 / 史前帰化植物 / 浸透交雑 / ナシ / 栽培植物 / 分類学 |
研究概要 |
北東北地方のミチノクナシ野生個体や栽培・逸出個体およびアジア大陸のナシ属植物について、昨年までの集団遺伝学的解析に続いて葉緑体塩基配列による分子系統地理的解析を行った。形態的分類及び集団遺伝学的解析では、従来Pyrus ussuriensis、P.bretschneideri及びP.pyrifoliaの3種に区分されてきた東アジアの栽培品種は、互いに遺伝的に極めて近縁であり生物学的に種を分けるほどは分化していない一方で、ミチノクナシとアオナシの野生個体およびアジア大陸の野生個体は遺伝的に大きく分化していることが判明しているが、葉緑体塩基配列のデータもこれを裏付ける結果が得られた。 ミチノクナシ野生個体の生育環境については、昨年に引き続いて生態学的な調査を行った。現在の生育地は、牧草地や林年など人的攪乱環境下の個体も多いが、本来の自生環境はサワグルミ、ハルニレなどが優占する渓畔林ではないかと推定した。さらに、外来種としてのナシ属植物の侵入性について検討した。近年米国においてP.calleryanaが外来種として問題になりつつあることや、近縁属のPyracanthaやCragaegusには侵入性の高い種があることを考慮すると、ナシ属についても、侵入性が全くないとは言えないと推定した。 また、集団遺伝学的解析から推定される類縁関係を伝統的分類や命名へ反映させるため、昨年に引き続き東アジアのナシ属植物の基準標本等の調査を行った。本年はウィーン自然史博物館およびウィーン大学に所蔵されている、SchneiderやHandel-Mazettiらによる日本や東アジアの標本を調査した。特にアジア大陸のP.ussuriensisについて多くの新たな標本資料を検討することができた。
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