2011年度は、前年度までに引き続き白百合女子大学辻川慶子専任講師に協力してもらいながら、資料の最終的な収集・整理を行ったうえで、篠田はデータベース構築のための技術的な検討を進め、海老根は成果のまとめと今後の研究のさらなる発展の可能性を2本の論考にまとめた(「産業的進歩の時代の文学-第2期『パリ評論』研究のための予備的覚書」、および「ボードレールと産業的進歩:1850年代におけるある文学論争」(仏語論文))。データベース構築に関する篠田の研究の成果の1部は、論考「中世文学研究とコンピューター」に反映されている。資料面での成果としては、本研究の主要な対象である雑誌第2期『パリ評論』のPDFファイル(フランス国立図書館、Gallica提供)のうち、新たに利用可能となった分の作業を終え、すべての巻号について印刷・製本・目次のディジタル化を完成させたことが大きい。さらに篠田は、19世紀中葉の交通事情の資料収集整理を進め、ラザール兄弟の『一八五五年パリ街路・記念碑歴史事典』所収の街区ごとの地図を、A3サイズに拡大複写し参照の容易な冊子としたほか、フランスの鉄道史研究のグループ2つに加盟し機関紙の購読を開始するなど、鉄道史関係の資料を広汎に収集した。海老根は第2期『パリ評論』に関係する文学者たちを研究するための基礎的資料の1つ『ミショー世界伝記事典』初版(含:神話篇)を購入した。なお、不定期ながら数度にわたり行った研究会には辻川講師にも参加してもらい、本プロジェクトの研究を踏まえた成果として、3本の論考(「ネルヴァルと歴史のエクリチュール-『塩密輸人たち-ビュコワ神父の物語』を中心に」、「文学作品の独創性と借用-ネルヴァル『ニコラの告白』の場合」、「19世紀、孤児たちの物語-ユゴーからヴェルレーヌまで」が得られている。
|