研究概要 |
本プロジェクトの目的は,従来からのドイツ語動詞分析の成果に活かしながら,(1)結合語句の共起度および(2)構文の意味機能に焦点を当て,ドイツ語動詞の語句結合の、頻度から見た使用実態を明らかにしようとするものである。初年度は,主に,大規模コーパスからの大量データを用いて,いくつかのドイツ語動詞をサンプル的に分析し,本プロジェクト遂行に必要な方法論を確立するとともに,本プロジェクトの基礎づくりをすることであった。そのため,分析対象として動詞verbringen(約3000事例)などを取り上げ,検索ソフトを用いながら,事例収集,事例分類,事例分析を行い,データ処理方法を実践的に確立するとともに,他方,ドイツ語研究に「有用性」という側面を導入する方法論の理論武装を行った。この段階でも,ドイツ語文形成における従来意識されて来なかったいくつかの重要な知見を得ることができた。前者の意義は,従来の,辞書事例などに基づく分析を,大規模コーパスからの大量データに基づく分析,すなわち現実の言語使用に基づく分析への道筋を開いたことであり,後者の意義は,内省的説得性に基づくドイツ語研究を,「有用性」に基づく客観的検証が可能な研究にする道筋を開いたことである。特に,ドイツ語の理論研究とドイツ語学習との関連性の重要性を明らかにした。 これらの研究は,ドイツでの,伝統ある結合価研究を発展解消させ,かつ社会的に意義あるドイツ語研究を創り上げうる点で極めて重要であると言える。
|