本研究では話しことば資料に基づき逸脱的特徴を持つ文を考察し、それらが類推によって成り立つことを明らかにした。こうした創造的な解釈は、顕在化している述語句の形式が表す語彙的意味と重ねて、ベースとなる構文の意味を重層的に解釈したものである。 (1)接続助詞的なヲの文(例:やろうとするのを、手をふった)ベースとなる構文:〈方向性制御〉他動構文(「AガBヲサエギル」など)解釈される意味:抽象化された、自然な流れに対する意図的な〈対抗動作性〉 (2)状況ヲ句文(例:雨の中を頑張った)ベースとなる構文:〈移動対抗動作〉他動構文(「AガBヲ突破スル」など)解釈される意味:抽象化された、逆境に対する意図的な〈移動・対抗動作性〉 (3)逸脱的な〈何ヲ〉文(例:何を文句を言ってるの)ベースとなる構文:〈スル〉型他動構文(「AガBヲスル」)解釈される意味:主体にその事態の成立の責任が帰せられるような、抽象化された意図的他動行為ベースとなる疑問詞疑問文:〈何ヲ〉型疑問疑問文(「何ヲスル?」) (4)逸脱的な〈何ガ〉文(例:何が彼女がお姫様ですか)ベースとなる構文:名詞述語文(「AガBダ」)解釈される意味:名詞(B)相当の意味ベースとなる疑問詞疑問文:〈何ガ〉型名詞述語文(「何ガBダ?」)
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