[内容] 人間の言語現象の一つである移動現象には、A移動(受身など)と非A移動(疑問詞移動)があり、これらのうちのA移動について取り上げた。移動の起こる前の位置で解釈されるような現象を再構築現象と呼んでいる。平成21年度はこのA移動の再構築現象を中心に研究を進めた。 A移動の再構築現象に関わる主な先行文献(論理形式における繰り下げ説、コピー理論説、連鎖束縛説、PF移動説、A移動の再構築否定説)をまとめ、それらの問題点を指摘した。代案として、トップダウン式の再構築理論やさらにその理論の発展形である併合に基づく構造構築理論を提案した。 [意義] A移動の再構築現象には諸説あり、それらをまとめておく必要があるが、今までの研究の中でそれらを包括的にまとめたものはなかった。また、各説ごとの主な問題点だけでなく、どの説にも共通した問題点をも指摘した。論理形式におる繰り下げ説や材コピー理論説は現在の主力の説であると考えられるが、これら両方に共通した問題点があることも今までの先行研究の中では指摘されていなかった。また、コピー理論説の最新の研究であるDavid Lebeaux(2009)の分析を詳細に検討し、その問題点を指摘した研究もこれまで行われていなかった。初年度である平成21年度はこのようなA移動の再構築理論のこれまでの研究を一から見直し、残りの3年間の研究の基礎として重要な研究であると考えている。
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