本研究の目的は、ハワイ最初の和太鼓グループであるハワイ祭太鼓の誕生から現在に至るまでの民族誌を著すことである。研究方法としては、(1)文献、雑誌、新聞記事等の文字資料の収集と分析、(2)ビデオ、録音テープ、CD等の映像音響資料の収集と分析、(3)演奏活動についての参与観察、および担い手へのインタビュー、の4つの方法を想定した。 2年目にあたる平成22年度には、ハワイ祭太鼓が所有する大量のビデオ資料のDVD化および文字資料の収集が、80パーセント終了した。またハワイにおけるハワイ祭太鼓の活動について、7月を中心に参与観察を行い、主なレパートリーとそのバリエーションについて記録を行った。 研究の中で特に興味深かったのは、ハワイ日系移民全体を象徴する歌とされている一世たちの残した〈ホレホレ節〉である。若い世代が〈ホレホレ節〉とその背景にある一世たちの暮らしを知り、なおかつ太鼓をはじめとした打楽器による伴奏をアレンジ、演奏する行為を通じて、つらい労働に耐えた一世たちを尊敬、感謝していた。また、ハワイ祭太鼓の創作曲の中には、ハワイのフラとのコラボレーションもあり、米本土での公演等において、「ハワイらしさ」を大きくアピールしていた。 ハワイ祭太鼓にとっての和太鼓とは、単に彼ら移民たちのルーツである「日本」とつながり、あるいは「アメリカの日系」というヨコのつながりを保つだけではなく、「ハワイに生きている自分たち」を表現する媒体となっている点が明らかになった。
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