本研究は高頻度の統計データが公開されている外国為替市場での伝播効果の経済要因を究明することが目的である。アジア通貨危機(1997年)、リーマン・ショック(2008年)、ギリシャ危機(2009年)が勃発する中、一国の経済変化が近隣諸国に悪影響を及ぼすことは想像し易い。 2年目の研究期間を終了し大別すると2つの研究を行った。環太平洋諸国とフォワード・リスクに焦点を当てた論文「The common component in the forward premium:evidence from the Asia-Pacific region」は完成しReview of International Eoonomicsに掲載されることが決定している。本論文は専攻研究と異なり、インドやフィリピンなどの発展途上国や色々な債券を考察していることが特徴として挙げられる。これら諸国間のプレミアムをBai-Ng(2004)により国別要素と共通要素に分解し、特に短期の債券に関しては、プレミアムの共通要素の重要性を指摘している。また、この共通要素はアメリカ合衆国の経済や政策変動に敏感に反応していることが分かった。つまり、環太平洋諸国間の金融市場の統合性が高いことを本論文では示している。 もう一つの研究は欧州諸国と為替リスクに焦点を当ており現在進行中である。同様の統計的手法(Bai-Ng2004)を用いているが、対象国やリスクの種類が異なることが上記論文との相違点である。初期段階の研究を、統計データを更新しながら行っており、現在のところ上記論文と整合性のある結果を得ている。共同研究者が所属している英国の大学への訪問および研究に必要な統計データ(DataStream)の購入が主な支出項目である。
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