本研究では退職給付会計に関する会計選択を全て取り上げて、経営者の報告利益管理行動について包括的に分析した。分析の結果、会計基準変更時差異による裁量が最も大きく、報告利益管理の中心であったことが明らかとなった。また、業績が良い企業ほど、規模が大きい企業ほど、裁量的退職給付費用は大きく、先行研究で議論されている予想に整合していた。さらに、Jones型モデルによる全体の裁量的発生高との関係を分析した結果、退職給付費用の各項目も関連しており、退職給付会計情報を追加することによって関連する報告利益管理行動を抽出できることが明らかとなった。
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