研究概要 |
本年度は、Shu-Ling Tsai(Research Fellow,Academia Sinica,台湾)氏と共同研究で、(1)マクロ社会構造の変化と教育拡大の関係、そして(2)教育拡大と出身階層格差の関係について日本と台湾の比較研究を進めた。その成果は、前者については国際学会で発表し、後者については学会誌に投稿した (掲載決定済み)。 (1)マクロ社会構造の変化と教育拡大については、独立変数間の相関関係を統制したうえで影響関係を分析する共和分分析によって検討した。その結果は、男女とも、そして日本と台湾の両国とも、サービス部門の雇用機会増大が高学歴化の主要因であったことをしめした。また、女性の労働市場参加の増大は、台湾女性の進学増大をもたらしていたが、日本ではそうした関係がみられなかった。 (2)教育拡大と教育達成格差の関係の検討では、教育拡大が飽和状態に近づくことによって出身階層格差が減少するというMMI(Maximally Maintained Inequality)仮説が両国で適合的だった。しかし、教育拡大が飽和状態に近づくと同じレベル内での教育の種類にかんする出身階層格差が出現し始めるというEMI(Effectively Maintained Inequality)仮説については、そうした格差出現が両国にみられたが飽和との関係は不明確だった。
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