●研究目的 本年度(平成21年度)は、次年度(平成22年度)に実施を予定している2つの調査、すなわち(1)成員喪失後の家族の軌跡の調査票調査、(2)グリーフケアの実践家および対象者のインタビュー調査調査の実施へ向けて主に文献研究を行った。 ●研究方法 「近代家族」における死者の位置付けを解明するため、社会学のみならず、民俗学や人類学、心理学、保健医療の分野まで幅広く先行研究の検討を行った。 ●研究成果 特に「死者とのつながり」に焦点をあてると、欧米の研究ではDennis Klassらの「絆の継続モデル(continuing bonds model)」が注目に値する。これは、グリーフの目的を新しい愛着を形成するために個人との絆を断ち切ることにある、とするフロイト以来の支配的な「絆の断絶モデル」に対し、欧米においても人々は死別した家族をその成員として位置づけようとしてきたことを示している。このことと、日本における死者とのかかわり方(祖先崇拝など)に関する先行研究の検討より、贈与論的パースペクティブから「死者の社会的生」を検討することにした。 死別とは、生前とは同様の交換ができなくなることである。しかし、生/死をまたぐ同一性が想定されている場合、生前の「収支」は死後に持ち越される。では、祖先崇拝意識が希薄化している近代家族において、死者との交換様式はどうなっており、家族内でのメンバーシップはいかに変化するのだろうか。また、本パースペクティブからすると、グリーフケアという介入は、「外部」からの交換バランスの評価の変更という行為になるが、グリーフケア提供者は、家族内(死者-生者)でどのような交換が行われることが望ましいとしているのか、またどのようにそうした望ましい交換を実現しようとしているのか。 次年度(平成22年度)に実施を予定している2つの調査より、上記の問(=本研究課題)に答えることを目指す。
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