本研究は、感情労働における感情管理プロセスの解明ならびに、感情労働が労働者に及ぼすネガティブな影響の軽減方略の検討を行うことを目的として実施してきた。昨年度までに実施された一連の研究においては、感情労働プロセスにおいては、事後的に職務に関連した感情(副次的感情)が喚起される副次的プロセスが、労働者の精神的健康に重要な影響を有していることが明らかとなった。また、筆記開示方略を応用した感情労働プロセスへの介入が、バーンアウトの低減に一定の有効性を持つことが確認された。 本年度は、感情労働プロセスにおいて、労働者の精神的健康に強い影響を及ぼすと言われている感情的不協和に着目した。感情的不協和とは労働場面における感情的葛藤経験を指し、副次的感情と並ぶ重要な要因であると考えられる。しかし、これまで、感情的不協和がどのような要因問の葛藤に起因するのかという点や、葛藤をもたらす要因の相違によってネガティブな影響力にも差異が生じるのかどうかについては明らかにされていない。そこで、本年度は感情的不協和をもたらし得る諸要因を挙げたうえで、新たな感情的不協和尺度を構成し、その信頼性と妥当性について検討を行うため、1000名の社会人を対象としたインターネット調査を実施した。 また、主に昨年度までに実施した一連の研究成果について、International Society of Research on Emotion 2012 (京都)、Fifth The (Non) Expression of Emotions in Health and Disease (オランダ)においてポスター発表を行った。
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