本年度は第1に、理論的研究の側面として、多様な活動システムの間での協働やパートナーシップを分析し新たにデザインする「活動理論(activity theory)」の発展的な枠組みにもとづき、地域において学校が様々なパートナーと協働・交雑するハイブリッドな教育イノベーションの概念を明らかにし、展開した。それは、地域において学校が、外部の様々なパートナー、学校外のコミュニティや組織とともにハイブリッドな協働活動を創造し、子ども、教師、保護者、学校外の多様な参加者たちの間に相互的な学びあいを生成するものである。また、こうしたハイブリッド型教育は、子どもたちを中心に、周りのコミュニティや社会をよりよく変えてゆくための地域学習のプラットホームを構築してゆくような学校の新たなあり方と見ることができる。 第2に、本研究の実践的研究の側面として、地域の公立小学校、関西大学初等部との共同研究を組織し、地域の伝統野菜の再生と持続可能な生活をテーマに、生活科と総合的な学習の時間における協働的学習活動の開発を進めた。また、「なにわ・大阪伝統野菜こどもシンポジウム」や「新聞・作文コンクール」といった、異なる地域の学校間での交流活動を企画・実施した。 こうした研究の成果は、学校の中に、子どもたちが多様なパートナーとともに地域文化の創造へ参加し、地域社会をよりよく変えることに貢献してゆく拡張的な協働的学習活動を生み出す、新たなハイブリッド型教育を明らかにするという意義と重要性を有するものである。
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