本研究は、音韻意識の習得関連要因のうち心理的要因(音や文字のイメージの利用、推論能力、メタ認知能力)を利用した指導プログラムを開発し、その効果を検証するために行われた。その結果、音声聴取能が高い者は、音のイメージを自発的に主用し、その他、推論やメタ認知活動を自発的に主用して学習を進める者も存在することが明らかとなった。一方、音韻意識の発達に関わる心理的要因を自主的には利用せず、音韻意識の発達に遅れが見られる人工内耳装用児も観察された。このことは、人工内耳装用児の音韻意識の発達において、いくつかの習得タイプが存在することを示唆し、それに応じた指導プログラムの開発および効果の検証が課題とされた。また当該指導の読み書き能力への影響については、促音表記のみに改善があまり見られなかったこと、および読書力に与える効果は、人工内耳装用児においても、音韻意識が読みの力の心理的なリソースとなりうることが示された。
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