研究概要 |
前年度に引き続き,ディリクレの約数問題から生ずる数論的誤差項Δ(x)について研究した.特に23年度は,Δ(x)の高次べきの離散和と連続和の差について研究した.この差は,既にハーディの論文の中に散見するが,詳細に研究したのは古屋である.彼は2005年の論文の中で,3乗までの場合に,差の詳しい漸近式を与えている.私は,古屋,ツァオ,ジャイとの共同研究で,離散和と連続和の差について,周期的ベルヌーイ多項式を用いない新しい表示方法を研究し,それを高次の場合に応用した.実際この方法によって,4乗の場合は十分な漸近式を,また5乗から10乗の場合には,差の主要項を分離することに成功した.同様に,ガウスの円問題や,ランキン-セルバーグ級数の場合にも考察した. 一方,上で述べたような離散和と連続和の差は比較的大きく,両者はお互いをうまく近似しているとは言い難い.そこで,連続和をうまく近似するような離散和のとり方を,彼らとともに共同研究した.その結果,2次のベルヌーイ多項式の2つの根でシフトした離散和を考えると,これが連続和を非常によく近似するという,奇妙だが興味深い結果を得ることができた.さらにΔ(x)とその2乗の場合に,これらのを含む積分と,シフトしたものを係数とするディリクレ級数を考えると,上から2番目までの極の主要部が一致しており,上の事実をディリクレ級数の方からも確認かつ解釈することができた. さらに23年度は,チャン,バーントとともに,ラマヌジャンのローストノートブックにある2つのディリクレ級数に関する公式を共同研究した.まずラマヌジャンの公式の証明をあたえ,次にそれを拡張した公式を見出すことができた.さらにスターリング数を用いた表示,三角関数を用いた表示方法など,組合せ論的にも興味深い公式を見出すことができた.
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