研究の計画通り、連続体とその部分集合を組合せ論的集合論や記述集合論の観点から調べた。特に、自然数全体の集合ωのベキ集合P(ω)を自然数上の定義可能なイデアルIで割った商集合であるブール代数P(ω)/Iなどの、集合論における商構造の組合せ論的性質に焦点を絞って研究を行った。 この研究テーマの一部として、Diana Montoya(アンデス大学、ボゴタ、コロンビア)との共同研究で、有理数全体の集合Qのベキ集合P(Q)を全疎の集合からなるイデアルnwdで割った商構造P(Q)/nwdを強制法の理論の観点から調べた。特に、強制法の理論における重要な問題である「基数の保存」について研究を行った。成果の概要は次の通りである。Dense(Q)を有理数の稠密な部分集合の全体とし、h(Q)を商構造Dense(Q)/nwdのdistributivity numberとする。「P(Q)/nwdがh(Q)以下の基数を保存し、連続体の濃度cをh(Q)につぶす」ことを証明するによって、Balcar、HernandezとHrusakの問題を解いた。この証明の主要な手段として、Balcar、PelantとSimonのP(ω)/finに対する古典的なbase-tree lemmaをP(Q)/nwdに適合させることで、P(Q)/nwdに対するbase-matrix lemmaを示した。しかし、P(Q)/nwdがσ-閉構造でないため、このbase-matrix lemmaの証明が古典的な証明より大分複雑である。 科学研究費補助金の繰越の金額を予定通り、集合論に関する意見交換や議論のために来日した海外研究協力者の招へい費用として使用した。
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