本研究はランダムなSchrodinger作用素に関する様々な問題に確率論的立場から取り組むことを目的としている。本年度は連携研究者の福島竜輝によって始められたPoissonモデルと周期的モデルの中間状態を記述するモデル、即ちポテンシャルを格子点からランダムにずらしたモデル(以下ランダム移動モデルと略称)における状態密度関数のスペクトルの境界からの立ち上がり方の研究についてまとめ、8月2日から8日までチェコ共和国のプラハにおいて開かれた第16回国際数理物理学会と11月26日から28日に高知大学において開かれた研究集会で発表した。またこの研究を2次元系においては一様な磁場がかかっている場合について拡張し12月2日から4日に京都大学において開かれた研究集会で発表した。この研究はランダムな状況から規則的な状況への推移の仕方を明らかにしたことに意義がある。磁場がかかっている場合の特徴は運動エネルギーの影響が小さいためにポテンシャルの影響が支配的になることが多くなることである。しかし運動エネルギーの影響を明確にすることは難しく現在得られているものは部分的な評価である。研究協力者の北垣芳彦はCombes-Germinet-Kleinによるランダム作用素の固有値の個数評価とその重複度評価と順位統計への応用の研究を離散系におけるランダムな音波モデルに拡張し12月2日から4日に京都大学において開かれた研究集会で発表した。
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