本研究の目的は無限遠の幾何とラプラシアンの持つ解析的構造の間の関係を調べることである。本年度は、次の二つの問題の解明に成功した: (1)離散スペクトルの無限性を保証するためのシャープな条件を求めることに成功した。それは、Ricci曲率の下限の無限遠での挙動で表される。さらに、例を挙げ、その条件がシャープであることを示した。結果を粗く言えば、ラプラシアンの真性スペクトラムの下限が(n-1)2k/4である様な多様体が、そのRicci曲率の下限が、十分遠方で、(n-1)(-k+b/r^2)以上であるとき、(n-1)^2k/4未満の固有値は、無限個である。ここで、b>(n-1)^2は定数で、rは、任意の点からの距離関数を表す。また、この曲率条件は、シャープである:実際、回転対称多様体の放射曲率が、十分遠方で、-k+a/r^2以下であるとき、(n-1)^2k/4未満の固有値は、有限個である。ここで、a<(n-1)^2は定数である。また、この結果は、プレプリント・サーバーに投槁済みである。この結果は、ノン・コンパクト多様体のラプラシアンのスペクトル構造の研究において基本的なものになると思われる。 (2)ノン・コンパクト多様体の一つのエンドが、ある条件を満たすとき、ラプラシアンのスペクトルは固有値を持たない。これは、任意の次元の多様体に対して、初めて示された結果であって、重要である。
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