研究概要 |
リーマン多様体は,基本群,(コ)ホモロジー群,ホモトピー群・ホロノミー群・特性類などの,言わば,幾何的な性質と,等周不等式,ソボレフ不等式,ラプラシアンが生成する熱核,グリーン核,リーマン測度,ラプラシアンのラプラス・ベルトラミ作用素などの解析的な性質を併せ持ち,両者の間には密接な関係が存在し,様々な角度から多大な研究がある.本研究は,特に,考察する多様体をノン・コンパクト・リーマン多様体とし,その多様体の無限遠方に幾何的な条件を与え,それがラプラス・ベルトラミ作用素の持つ解析的な特性に,いかに反映されるかを明らかにしようとするものである.平成22年度においては,まず,前年度に得られた結果を次のように一般化し,結果は,ANNALES DE L'INSTITUT FOURIERに掲載予定である:(M,g)を有限個の'エンド'を持つリーマン多様体とし,ラプラス・ベルトラミ作用素の真性スベクトラムの下限が(n-1)^2k/4であると仮定する,また,Uを滑らかな境界をもつ任意の開部分集合とし,rをM-U上のUからの距離関数とする.(M,g)における,Uの境界に関する最少軌跡をCut(U)と記すとき,(M,g)の関数rの勾配方向のRicci曲率の下限が,M-Uの十分遠方において、(n-1)(-k+b/r^2)以上であれば,ラプラス・ベルトラミ作用素は,[0,(n-1)^2k/4)内に無限個の固有値を持つ。もう一つの研究の方向としては,考える多様体を単純なものにし,考える対象を,ラプラス・ベルトラミ作用素ではなく,ポテンシャル項を加えたシュレーディンガー作用素にするというものである.このとき,多様体の持つ無限遠の幾何がポテンシャル項に反映され興味深い.実際,実双曲多様体の場合は,芥川氏と共同研究を過去において行った,そこで,今度は,複素双曲多様体においても,これらの事を考察した.
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