研究成果の概要(和文):量子系のパラメータを周回させるとき、系の固有状態が元の状態に回帰せず別の固有状態に移行する現象を新奇量子ホロノミと称する。本研究では昨年度までにおいて、新奇量子ホロノミのゲージ場理論を創り上げ、これが従来から知られていた量子位相のホロノミ、すなわちベリー位相の拡張として、同一の枠内で理解出来ることを示した。本年度は昨年度に引き続き、多順位系において量子ホロノミにがどのように現れるか、そこでのゲージ不変量としていかなるものがあるかに注目して研究を行った。その結果、ホロノミ行列の行列式がゲージ不変量であり、その意味が対角化した時の固有値の積として解釈出来る事から判るように、これはかつて「Off diagonal holonomy」の発見者によって抽出されたマニーニ=ピストレシのゲージ不変量と同等であることが示された。量子的な対象物をマクロに操作する事が実験的課題に上っている現在、新奇量子ホロノミはベリー位相の「レパートリを広げる」拡張として重要であると考えられる。新奇量子ホロノミの実験的実現へ向けての刺激として、また実験的実現の後の様々な応用への指針として、また今後の新奇量子ホロノミの理論的研究への礎として、本研究が少なからぬ意義をもつものと考えている。
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