研究概要 |
平成21年度は、本研究の開発目的である相互侵入網目ゲル電気化学発光(ECL)素子の発光層である、相互侵入網目発光ゲルの合成を検討した。相互侵入網目発光ゲルは、発光能を有する共役系高分子、有機-無機ハイブリッド網目構造、および溶媒から構成される。まず、共役系高分子として、有機-無機ハイブリッド構造との親和性、および発光素子の電極近傍において発生するラジカルの安定性を考慮して、主鎖にケイ素-ビニレン構造、側鎖にエーテル基を有するフルオレン系σ-π共役系交互共重合体の合成を検討した。具体的には、エーテル側鎖を有するジブロモフルオレン化合物とジビニルジアルキルシラン化合物とのパラジウム触媒を用いた溝呂木-Heck反応による共重合を行った。低分子量体ではあるが、目的とする共重合体が得られた。同共重合体の蛍光量子収率は比較的高く、また、種々の有機溶媒に易溶であった。高分子量化については、反応条件の最適化が必要であると思われる。次いで、炭化水素溶媒中、共役系高分子の存在下で、スペーサー分子のα,ω-非共役ジエンと、架橋点となるスクエアシロキサンおよびキュービックシルセスキオキサン化合物とを白金触媒を用いたヒドロシリル化反応により付加し、網目構造に直鎖状の共役系高分子が貫通、分散した相互侵入網目発光ゲルを合成した。共役系高分子としては、分子量や側鎖の構造の影響を調査するため、既存のジアルキルポリフルオレンを用いて検討を行った。溶媒にトルエンを用いた反応では、透明で均質な相互侵入網目ゲルが生成した。また、相互侵入網目ゲル中のポリフルオレンの蛍光強度が、トルエン溶液中のそれよりも高くなることが明らかになった。
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