研究概要 |
本年度はエピタキシャルPZT薄膜の圧電すべり効果の評価を中心に研究を実施した.特に(001)MgO等の基板上に形成したc軸配向エピタキシャルPZT薄膜の圧電すべり特性を本研究により開発した測定法を用いて計測をした. 圧電すべり特性計測の難しさは分極方向に対して平行に対向電極を形成する点であり,そのため分極を揃えるために駆動電極に対して平行に電界を印加して分極処理を行う必要があり,特に薄膜材料を用いる際の障害となっていた.本研究では,スパッタ方で形成したエピタキシャルPZT薄膜の分極が薄膜作製時に1方向に揃う性質を利用して圧電すべり変位および圧電すべり定数を評価した. 測定サンプルとして,PZT薄膜を幅約20~30μmの細い矩形上に微細加工し,その側面に分離した電極を形成した.特に(l00)MgO基板上にはPZT薄膜がc軸に配向する性質を利用し,側面電極により分極に対して垂直に電界を印加することができる. 側面電極間に電圧を印加し,圧電すべり効果により発生する面内変位をレーザードップラー振動計を用いて測定した.測定の結果,電圧に比例した圧電すべり振動が計測できた.側面電極内部に発生した面内方向の電界を有限要素法を用いて測定し,電界と変位量の関係から圧電すべり定数d15を測定した結果,バルクPZTに匹敵する値を有していることが明らかとなった. この他,(110)および(111)SrTiO3基板上にPZT薄膜のスパッタ成膜を行い,それぞれの面方位に配向したエピタキシャル成長を確認した.これらの膜においても同様の加工および計測を行い,圧電すべり特性を継続して評価している.
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