研究概要 |
本年度は昨年度に引き続きエピタキシャルPZT薄膜の圧電効果の評価を実施した.MgOおよびSrTiO3基板上に(001),(110),(111)エピタキシャルPZT薄膜を形成し,その圧電横効果および圧電すべり特性の計測を行った. 圧電すべり特性の測定には,PZT薄膜を幅約20~30μmの細い矩形上に微細加工し,その側面に分離した電極を形成したサンプルを用いて行った.側面電極間に電圧を印加し,逆圧電効果による圧電すべりひずみが面内変位として現れるため,これをレーザードップラー振動計を用いて測定した.この他,基板ごと短冊状に切り出したユニモルフカンチレバーにストライプ状の電極を形成し,その逆圧電効果により生じる先端変位から圧電横効果e_<31>^*の評価を行った. 測定の結果,(001),(110),(111)エピタキシャルPZT薄膜の圧電すべり定数d15はそれぞれ440pm/V,305pm/V,160pm/Vであり,(001)PZT薄膜が最も高い値を示した.一方,(001),(110),(111)PZT薄膜の圧電横効果e_<31>^*は,それぞれ6.4C/m^2,8.1C/m^2,4.0C/m^2と(110)PZT薄膜が最も大きな値を示した.圧電すべり効果は分極軸に垂直に電界が印加するため基本的に分極回転の効果によりひずみが発生するため,c軸配向膜が最も高い圧電効果を示したと考えられる.一方,圧電横効果については,格子の伸縮によるintrinsicな圧電効果と分極の回転によるextrinsicの効果の競合過程となり,そのため(110)PZT薄膜の圧電特性が大きくなったと考えられる. 本研究では,特に薄膜材料の圧電すべり効果を正確に評価することが可能となり,結晶配向と圧電すべり効果の影響を考慮することで見かけ上の圧電効果を解析し更なる圧電特性の向上にむけた指針を得ることができる.
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