平成23年度の主な成果は下記である。 1. NATMにおける鋼アーチ支保工の役割の再検討 : NATMの場合には、吹付コンクリート厚さhとトンネル半径rの比h/rが0.1になるケースもあることから、吹付コンクリート部分にはせん断変形を考慮した修正円筒殻理論及び鋼アーチ支保工(H形鋼)にはリング理論を用いて定式化を行い、新たな支保剛性算定式を導き、さらに薄肉円筒殻理論を用いて導いた支保剛性算定式(平成21年度)との比較検討を行い以下の点を明らかにした。 (1)支保剛性に与えるせん断変形の影響は、h/rの値が大きいとき、及び吹付コンクリートと鋼アーチ支保工剛性比EchL/(EsAs)が小さいとき(すなわち鋼アーチ支保工の規模が大きいとき)に現れる。ただし、Ec、Es=吹付コンクリート、H形の弾性係数、L=H形鋼の建込み間隔、及びAs=H形鋼の断面積。 (2)鋼アーチ支保工設置位置における支保剛性の算定値は、修正円筒殻理論を用いた結果は薄肉円筒殻理論を用いた結果より大きいが、その差の最大は吹付コンクリートの弾性係数が小さいとき(若材齢時)で2%であり、薄肉円筒殻理論に基づく支保剛性算定式の有効性・妥当性が確認された。 2. 新たな断熱材設計法の提案:断熱材の厚さをトンネル坑口より一定区間毎に段階的に変化させ断熱材を施工するために、トンネル延長方向温度分布算定式(平成21年度)を用いて、既設トンネルでは氷柱防止のための外部断熱設計法及び新設トンネルでは地山凍結防止のための内部断熱設計法を提案した。この方法によれば、トンネル坑口より一定の厚さの断熱材を施工する現行の施工法に比べて、経済的・合理的な施工が可能となる。
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