本研究の目的は、超国家的な日本飲料企業の原料調達行動の変化とそれに対する産地システムの連携関係の変化について茶飲料を対象に実証的に明らかにし、グローバルな食品企業行動のもとでの持続可能な産地システムのあり方について検討することにある。研究実施計画に基づき、平成21年度は、(1)日本の大手茶飲料企業の原料調達の現状と生産販売戦略および茶原料産地との関係等についての実態調査を行うとともに、(2)日本の茶飲料の原料調達先であり、中国有数のウーロン茶産地である福建省泉州市および安渓県にける農業関連部局、加工流通業者および農業者の実態調査を実施した。 ウーロン茶飲料の開発と需要増大の下で大量の原料調達を中国茶産地に求めてきた日本の茶飲料企業は、消費者の安全志向の高まりに対応して日本国産の原料調達による緑茶飲料の開発と販売拡大戦略にシフトし、その中でも大手の茶飲料企業は直営か契約栽培による国内茶産地の育成を図ってきている。その結果、国内茶市場は大手茶飲料企業の原料調達に主導され、国内茶産地システムも転換してきている。一方中国の茶産地においては、日本への飲料原料輸出減少の下で、これまで大規模な輸出基地を形成してきた加工販売企業は国内市場向けの高級茶の開発と販売拡大戦略にシフトし、それに対応して、加工販売企業と契約栽培等を行ってきた茶農業者は共同販売組織を形成して高級茶の生産販売に取り組むという新たな産地システムの形成が起こっている。
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