本研究の目的は、超国家的な日本飲料企業の原料調達行動の変化とそれに対する産地システムの地域的連携関係の変化について茶飲料を対象に実証的に明らかにし、グローバルな食品企業行動のもとでの持続可能な産地システムのあり方について検討することにある。研究実施計画に基づき、平成22年度は、(1)中国有数の茶産地である浙江省杭州市において市の農業関連部局、加工流通業者および農業者や茶飲料販売業者に対する実態調査の実施と文献資料の収集と分析、(2)日本における茶飲料業者の動向を把握するために統計資料等の資料収集と分析を行った。 ウーロン茶飲料の開発と需要増大の下で大量の原料調達を中国茶産地に求めてきた日本の茶飲料企業は、消費者の安全志向の高まりに対応して日本国産の原料調達による緑茶飲料の開発と販売拡大戦略にシフトし、中国からの原料輸入を削減してきている。その影響は中国の緑茶産地にも及び、中国最大の緑茶産地である浙江省杭州市の「龍井茶」ブランド産地においても産地編成が大きく変わってきている。大規模な輸出基地を形成してきた加工販売企業は、国内外市場向けの安全安心を謳う高級茶の開発・販売拡大ととともに、消費者を産地に直接的に呼び込んで「産地直売」や「茶ツーリズム」ともいうべきマーケティング戦略を拡大しており、昨年度の調査で明らかになった福建省のウーロン茶産地とは異なる新たな産地システムを構築しつつある。一方、国内茶市場は大手茶飲料企業の原料調達に主導され、国内茶産地システムも大きく転換してきている。
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