我々は甲状腺癌の遺伝子背景について多面的な観点から検討した。その結果、分化癌(乳頭癌や濾胞癌)から低分化癌や未分化癌のプログレッションには、BRAF遺伝子突然変異が重要で、RET遺伝子の再構成はこのプログレッションとの関係は見いだされなかった。さらに従来、濾胞癌の発生に関係するといわれているPPARγ/PAX8遺伝子もこのプログレッションには見いだされなかった。今回の検討では、甲状腺分化癌の進展増殖にアクアポリン(AQP)のタイプ4が強く関係したが、未分化癌でのアクアポリンはこれまでのところ見いだされず、今後の課題となった。これらの結果は、甲状腺癌の病理学的理解に重要で、さらに将来的な分子標的治療の確立にも有用なものと考えられた。
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