研究概要 |
本研究ではテネイシン-C及びTransforming growth factor(TGF)-β1の上皮間葉移行への関与について検討している。昨年度までに、乳癌細胞株MCF-7をテネイシン-C/TGF-β1刺激下で培養し、蛍光抗体法、ウェスタンブロットを行い、形態的変化E-カドヘリンとβ-カテニンの局在から上皮間葉移行様変化を起こすこと、Focal adhesion kinase,SRCのリン酸化が重要であることを明らかとして論文を作成し、今年度にAmerican Journal of Pathologyに掲載された。さらに、この変化を起こすシグナルを受け取るテネイシン-Cレセプタについて検討を行い、昨年度明らかとしたインテグリンαvβ6に加えて、インテグリンα2β1とシンデカン-4が関与していることを生化学的手法および中和抗体やヘパリンによる阻害実験で明らかとした。また、両者はそれぞれ独立して上皮間葉移行様変化に関与していることが判明した。平滑筋細胞ではインテグリンαvβ3がテネイシン-Cからのシグナル伝達に重要であることを示した論文も発表しており、細胞により使われるテネイシン-Cレセプタが異なるようである。テネイシン-C添加による発現レベルの変化については、当初はアレイを予定していたが、関連すると思われる分子については、定量的PCR法により変化を十分に明らかとできたと考えている。また、mRNAとタンパクの発現レベルはインテグリン分子などでは相関しないことが分かった。現在、各インテグリンとシンデカン-4からのシグナルについて検討をしており、これらについては来年度に論文を作成する。
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