研究分担者 |
三宅 洋一郎 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80136093)
鹿山 鎭男 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (50432761)
桑原 知巳 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60263810)
吉永 哲哉 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40220694)
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研究概要 |
緑膿菌の抗菌薬抵抗性に関与する遺伝子ネットワークを糊する目的で,rpoS, rpoNなどのσ因子遺伝子やquorum sensing関連遺伝子の発現制御の相互関係およびバイオフィルム形成の初期過程である固相表面への付着による各種遺伝子の発現変化について検討し,以下の成果を得た。 1. rpoS遺伝子はbiapenemやofloxacinに対する抵抗性獲得に関与しており,rpoN遺伝子はこれらの抗菌薬抵抗性を低下させることが判明していることから,rpoN遺伝子はrpoS遺伝子の転写抑制または転写後のmRNAの安定性や翻訳過程などσSの転写活性の低下のいずれかに関与している可能性が考えられたため,rpoN変異株およびrpoN強制発現株におけるrpoSmRNAの発現量をReal-TimePCR法により測定したところ,いずれの菌株も親株における発現量と同レベルであった。一方rpoN遺伝子の発現上昇によって,rpoSによって正の制御を受けているaer2遺伝子のmRNAの発現が抑制されていることが判明した。したがってrpoNはrpoSmRNA転写後の翻訳阻害,翻訳後のRpoS蛋白の分解またはRpoNによるRpoSの転写活性化の拮抗阻害のいずれかの過程に影響を及ぼしていることが示唆された。 2.緑膿菌のバイオフィルム形成にはsecond messenger c-di-GMPが深く関与しており,c-di-GMP蓄積量の亢進した菌株はrugose small-colony variant(RSCV)と呼ばれる嚢状の微小集落を形成し,高いバイオフィルム形成能を示すことから,細胞内のc-di-GMP量は抗菌薬抵抗性に関与しているのではないかと推察し,研究室保存の臨床分離株よりバイオフィルム形成能が高くRSCVを示す菌株を検出し,c-di-GMP合成・分解に関与する遺伝子の構造と付着菌の抗菌薬抵抗性と各種遺伝子発現量について検討した。その結果RSCVを示す菌株PTD12はwspF遺伝子のフレームシフト変異を有し,WspRの構成的な活性化によりc-di-GMP量が亢進していると推察された。PTD12株の付着菌のMBCはMICの128倍を示し,この菌株にc-di-GMPの分解酵素遺伝子を導入するとこの性状は親株レベルに低下した。したがって緑膿菌の付着時の抗菌薬抵抗性にはc-di-GMPが深く関与していることが示唆された。
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