本研究は、膠原病患者のQOLを大きく規定する因子である後根神経節炎、自律神経ニューロパチーに関する発症予知因子、早期診断あるいは予後推定のマーカーを探索、同定するとともに、より早期から定量性をもって本症を検出しうる神経生理学的、病理組織学的検査手順を確立することを目的とするものである。 初年度にあたる平成21年度はまず、様々な神経生理学的、病理組織学的手法を用い、シェーグレン症候群患者の末梢神経機能、あるいは末梢神経の障害度を評価することで最適な神経学的検査法、病理組織学的検査法を構築しようと試み、quantitative sensory testing (QST)、レーザー血流画像検査、ならびに生検皮膚のH.E.染色標本における膨隆汗腺の有無チェックが、最も早期にシェーグレン症候群患者における末梢神経障害の発症を確認しうる方法であることをつきとめた。さらに平成22-23年度は、前述の各種検査法で末梢神経障害の早期と判断したシェーグレン症候群患者の血清、あるいは皮膚生検組織を用い、プロテオミクス解析の技術を応用した網羅的解析を行うことで、シェーグレン症候群に伴う後根神経節炎、自律神経ニューロパチーの発症予知因子、早期診断マーカー、あるいは予後推定マーカーの探索を試みた。網羅的解析の結果、発症予知因子、早期診断マーカー、あるいは予後推定マーカーとなりうる可能性を持つ候補蛋白質、ペプチドが多数ピックアップされたものの、最終的に臨床的に有効と思われるマーカーの確立までには至らなかった。しかし、3年間本研究を遂行していく過程で、副産物としてシェーグレン症候群以外の自律神経ニューロパチー患者の診断に有用なツールが複数考案された(業績参照)。
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