研究概要 |
本年度はClass IA、Class IB PI3キナーゼホモ欠損マウスp110δ-/-、p110γ-/-およびClass IA PI3キナーゼヘテロ欠損マウスp110α+/-とAlb-Cre Pten^<flox/flox>マウスの二重遺伝子変異マウスAlb-Cre Pten^<flox/flox>/p110α+/-、Alb-Cre Pten^<flox/flox>/p110δ-/-、Alb-Cre Pten^<flox/flox>/p110γ-/-マウスの40~60週齢における肝重量、肝重量/体重比の測定とHE染色および脂肪染色による組織学的解析を行なった。Alb-Cre Pten^<flox/flox>マウスと二重遺伝子変異マウスとの間に有意な差はみられず、Alb-Cre Pten^<flox/flox>マウスの肝臓におけるPtenの欠損はPI3キナーゼの欠損によってレスキューされないことが明らかになった。一方、昨年度より、Ptenによって脱リン酸化をうけるイノシトールリン脂質PI(3,4,5)P_3と同じ機能を有すると考えられるPI(3,4)P_2の脱リン酸化酵素Inpp4の遺伝子欠損マウスInpp4B-/-とAlb-Cre Pten^<flox/flox>マウス交配を開始し、現在、Alb-Cre Pten^<flox/flox>/Inpp4B-/-二重遺伝子変異マウスが得られている。40週齢のAlb-Cre Pten^<flox/flox>マウスでは80%(5匹中1匹)に肉眼的に腫瘍性病変がみられるのに対して、Alb-Cre Pten^<flox/flox>/Inpp4B-/-マウスでは14匹すべてに腫瘍性病変が認められた。さらに、これらの腫瘍性病変を組織学的に検討すると、Alb-Cre Pten^<flox/flox>マウスでは1匹も癌化がみられないのに対して、Alb-Cre Pten^<flox/flox>/Inpp4B-/-マウスでは14匹中4匹(29%)に癌化が認められ、Inpp4BはAlb-Cre Pten^<flox/flox>マウスでみられる肝癌の制御因子であることが示唆された。
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