PPARγのアゴニストであるチアゾリジン誘導体(TZDs)は、主に脂肪細胞に働き、インスリン抵抗性を改善させることより、現在、糖尿病治療薬として臨床応用されている。加えて、2型糖尿病患者において、TZDsの投与により、高血圧症合併患者の血圧低下や、動脈硬化、腎臓障害の発症・進展の抑制、心血管イベント発症や再発のリスクの低下などの臨床試験の結果が報告されている。これらの効果に関して、TZDsによる全身のPPARγの活性化の中で、血管内皮におけるPPARγの活性化の重要性を解析する目的にて、血管内皮細胞特異的にPPARγの発現を欠失させたPPARγE-KOマウスを作製した。さらに、心血管病における血管内皮のPPARγの働きを解析するために、動脈硬化モデルマウスであるApoe-KOマウスと、PPARγE-KOマウスを交配することで、PPARγE-KO-ApoeKOマウスを作製し、高脂肪食下にて飼育後に、マウスの腹部大動脈を単離し、血圧制御や、動脈硬化形成に関係する遺伝子の発現について、コントロールのPPARγwild-ApoeKOマウスと比較検討を行った。PPARγE-KO-ApoeKOマウスの大動脈において、Agtr1a、TNF-αの発現の亢進を認めたが、eNOSの発現には、両群に差を認めなかった。腎臓について検討した結果、組織学的に、糸球体の腫大に関しては、両群に有意差を認めなかった。しかし、PPARγE-KO-ApoeKOマウスにおいて、腎臓におけるNOX4の発現が増加しており、血管内皮細胞のPPARγの発現の欠失にて、腎臓における酸化ストレスが亢進している可能性が考えられ、血管内皮におけるPPARγの活性化が、腎臓障害の発症予防となる可能性が示唆された。
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