研究概要 |
本研究は、近年知られるようになった上皮-間葉転換(Epithelial Mesenchymal Transition : EMT)を抑制することにより,線維芽細胞から表皮細胞を直接誘導する新しい発想に基づく研究である.EMTのマスター転写因子であるSnailの発現を強力にノックダウンすることにより、皮膚潰瘍底にある線維芽細胞から表皮細胞を直接作り出す治療法を開発することを目的とする. まず正常皮膚でのSnailの発現を確認するため、培養表皮細胞と線維芽細胞から、RNAを採取し、RT-PCRにてSnailの遺伝子発現を確認.また、蛋白を採取しウエスタンブロットで蛋白発現を確認した.正常皮膚においても免疫組織化学に用いる抗体による染色で局在を検討した.次に本研究の対象疾患である皮膚潰瘍でのSnail発現を検討するため、褥瘡患者の患部組織の表皮および真皮から得られたRNAと蛋白を用いてRT-PCRとウエスタンブロットでSnailの発現やリン酸化の状態をみた.また、組織学的にもSnail抗体を用いて局在等を検討した.Snailの強発現系での細胞への影響をみるため、SnailのcDNAを構築し、ベクターに挿入し発現ベクターを作成した.さらに、テトラサイクリンでの誘導可能な発現ベクターも作成し、表皮細胞や線維芽細胞に通常の発現ベクターを一時的に導入したのち表皮細胞の発現マーカーであるカドヘリン群、インテグリン群、VII型コラーゲン、トランスグルタミナーゼ、線維芽細胞のマーカーであるファイブロネクチン、メタロプロテネース群、I、III型コラーゲンの発現をRT-PCRで測定した.次に、上皮系細胞と間葉系細胞の形態の変化を観察.さらに、発現誘導の系でも表皮細胞や線維芽細胞の細胞株でstableの系を作成し.さらにテトラサイクリンでのSnail誘導前後で、それらの細胞の遺伝子発現を検討した.来年度も本研究を継続する予定である.
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