本研究では、蝸牛蓋膜を構成するコラーゲン・テクトリン・オトジェリン等のタンパク質をコードする遺伝子の変異により、蓋膜の構造などが変化するために発症る難聴に焦点をて、新規遺伝子変異の探索とその臨床像との相関の検討を行うとともに、蓋膜を構成するタンパク質の組織内局在、またそれぞれのタンパクの相互作用について検討し、その難聴のメカニズムを明らかにする事を目的としている。 平成22年度は、蓋膜構成タンパクのひとつ、α-tectorinをコードするTECTA遺子について優性遺伝形式をとる遺伝性難聴家系(250家系)を対象に変異解析を行い、変異部位やアミノ酸置換の違いにより聴力像や難聴の進行度合いに違いがあることが見いだされた。3家系から新規の変異を見いだした。見出された変異のうち、ある変異においては、10歳代では難聴は軽度であり主に中音域が障害されるが、加齢に伴い高音部においても正常人の加齢生変化を上回る聴力の悪化が認められ、本遺伝子変異による影響と考えられた。また、優性遺伝形式をとる家系内において性差により難聴の発症に違いが見られる可能性が示唆された。 また、野生型とこれら難聴をきたす変異型のα-tectorinのGFP付加タンパクを培養細胞に発現させその動態の違いを確認した。TECTAタンパクは野生型では細胞膜上に分布するのに対し、変異型では細胞質内に凝集する傾向があり、これらの生体内での動態の異なりが感音難聴の原因のひとつとなりうることが考えられた。今後さらに検討を重ねる事で、TECTA遺伝子変異による難聴発症のメカニズムを明らかにしていく計画である。 置換の違いにより聴力像や難聴め進行度合いに違いがあることが見いだされた。3家系から新規の変異を見いだした。見出された変異のうち、ある変異においては、10歳代では難聴は軽度であり主に中音域が障害されるが、加齢に伴い高音部においても正常人の加齢生変化を上回る聴力の悪化が認められ、本遺伝子変異による影響と考えられた。また、優性遺伝形式をとる家系内において性差により難聴の発症に違いが見られる可能性が示唆された。
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