小児肝疾患に対する肝移植医療が患児たちに大いなる福音を与え、その成績も満足いくものであり、単に肝疾患末期状態に対する救命的な意義だけでなく、成長障害の改善、QOLの改善にも大きく寄与し、治療選択して不可欠なものであるという位置づけにあることを明らかにした。手術手技の向上、免疫抑制療法の改良にてより低年齢の症例に対しても安全に手術を行えるようになってきている。 乳児期肝移植症例は近年増加傾向にあり、小児肝移植症例の15%を占める。乳児期には免疫学的に成人とは異なったバランスをしており、臓器移植後に用いられるの影響は少なからず懸念され、また、乳児期特有の免疫バランスを考慮した臓器移植後抗免疫療法の検討も必要である可能性が推測される。 対象症例に対し、インフォームドコンセントを得た上で、骨代謝を含めた成長・発達に関する免疫抑制療法の影響を明らかにする目的で計測を行い、データを蓄積し、解析を行いつつある。また、免疫学的なバランスを末梢血中の単核球から検討し、免疫抑制療法をっていない場合との相違を明らかにするための検査を行いつつある。 乳児期肝移植症例を長期にわたり経時的に免疫バランスを観察することは、単に免疫抑制療法の功罪や長期予後を推測するに留まらず、年齢・免疫バランスを考慮した適正な免疫抑制療法の確立、また、乳児期にみちれる重症肝障害、劇症肝不全の原因の解明にも寄与する可能性が期待される。
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