本研究の目的は、咀嚼を、下顎という特定の質量(m)を有する物体がある速度(ν)で上顎に対して衝突を繰り返す運動であると捉え、運動エネルギー(1/2mν^2)を指標とした新しい咀嚼機能評価システムを構築することである。本年度はCT画像からヒトの下顎の質量(M)を計測し、5種類の食品について咀嚼速度の計測を行い、咀嚼運動エネルギーの分析を試みた。 咀嚼運動速度波形の閉口相における時間速度積分値(F)を応用して、咀嚼運動エネルギー(以下、W)の基準化を行った。すなわち、チューインガムの咀嚼開始後の第5サイクルから第14サイクルまでのFの平均値(F_G)、およびチューインガム以外の被検食品の第nサイクルにおけるFの値(F_n)を算出し、〓により基準化することとした。 咀嚼開始から第10サイクルまでを分析対象とし、以下の式でW[J]を求めた。 [numerical formula] 本式を17名の被験者で4種類(かまぼこ、羊羹、グミゼリー、ピーナッツ)の食品について咀嚼速度を計測し、咀嚼運動エネルギーの分析を試みた。その結果、各被験食品における咀嚼運動エネルギーを分析しうることが示された。
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