研究課題
本研究の目的は、高齢者の運転に関する当事者や地域の保健福祉関係者の認識を明らかにし、自立した生活の維持や介護予防の推進に資することである。今年度はケアマネジャー(以下、CMと略す)と民生委員の認識を明らかにするとともに、高齢者の運転可能年齢の自己認識を明らかにし、認知機能の低下した高齢者の安全運転および運転中止に向けた支援について検討した。A町の老人クラブ所属高齢者を対象とした無記名自記式質問紙調査の結果、高齢者が安全に運転できると考える年齢と実年齢との差は、運転中止者2歳に比し、現在運転中は7歳と有意に高い。高齢者の71%は自分の運転に危険を感じ、時間に余裕をもつ・走り慣れた道を走る・体調不良時は運転しない等の安全行動を取っていた。CMの95.0%、民生委員の87.8%は一般高齢者の自動車運転に危険を感じ、経験年数3年以上のCMは全員が認知症高齢者の自動車運転中止に苦労した経験を有し、周囲が危険を感じた時点で自動車運転を中止すべきと考えていた。地域福祉を推進する立場の民生委員は、高齢者が自覚を持ち、周囲が関心を示すことで理想とする運転中止過程への期待を抱いており、認知症高齢者や家族にも自力による問題解決を求めている。一方、CMは本人や家族が運転中止を決断・実行する難しさを知っており、最終的な判断は公的システムに委ねることを期待している。地域全体で高齢者の運転に関心を寄せ、見守り、助け合うとともに、安全運転行動を啓発し、免許返納後の自立した生活を維持するための社会的支援の推進が求められる。その一環としてホームページを作成し、調査結果ならびに認知症ドライバーと家族の経験、認知症高齢ドライバーの事例、民生委員とケアマネジャーの経験などをお役立ち情報とともにホームページで公表した。
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