研究課題/領域番号 |
21592894
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
久野 暢子 山口大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (40253760)
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キーワード | HIV/AIDS / 在宅療養支援 |
研究概要 |
平成23年度は前年度に引き続き、過去に在宅療養支援導入を行ったHIV陽性者および医療従事者に対して導入時の課題を抽出するための面接調査を行った。対象ケースはほとんどがAIDS発症により感染が判明しており、現在生活保護を受けていた。面接内容を質的に分析した結果、後遺症による認知機能の低下や感染症判明後の就労困難と関連した生活環境の調整や日常生活の過ごし方への配慮、治療薬の確実な内服のための介入などが主な課題としてあげられた。また基礎疾患として血友病がある場合は、血液製剤の在庫や血友病の専門知識を持った医療者の不在などの理由から一般医療機関への転院が困難であることがあげられた。在宅療養サービス利用については、複数の身体障害者手帳を取得していたにも関わらず回復の状態と利用できるサービスが一致していなかったため、自分にとって最適なサービスを受けるのが困難だったと語られた。これらのことから、専門知識をもった医療者が利用できるサービスの範囲内で患者がどのニーズを優先させたいと思っているかを事前に十分に話し合い、役所対応の時間的余裕を持って介入する必要があることが示された。さらに、HIV陽性者自身が感じる問題点として、手続きが異なった機関・時期であることでの情報管理の困難さや日常生活の中での細やかな個人情報保護への心配などがあげられた。 山口県の訪問看護ステーション従事者を対象としたHIV陽性者の在宅療養支援プログラム(試案)に関しては、前年度に未実施であった1支部に対して行った。実施前後でのグループ討議及び質問紙調査の結果、実施前の対象者のHIV/AIDSケアに対する準備は全般的に不十分であったが、実施後は半数強の人が準備をしていきたいという方向へ意識が変化していた。教育プログラムの内容としては、HIVの特徴をふまえた「ケアのポイント」「具体的事例」に関してより効果を高める内容へ改善していく必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題は訪問看護師を中心に訪問介護従事者まで網羅した教育プログラムの開発を目標としていたが、訪問介護従事者へは個別の教育的介入より訪問看護師が具体的なケースに合わせて指導していく方が現実的で効果が高いと考えられた。従って対象を訪問看護師と変更し、介護従事者忙対しては間接的な教育効果を求める方が適切と考えられる。このような変更を前提とすれば、柱となる2つの調査は概ね終了しており、次年度に計画している全国調査から最終目標は達成可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように、本課題の対象を訪問看護師に絞り、訪問介護従事者への間接的な教育効果を狙うというように計画を変更するため、在宅療養支援プログラム(最終版)には「介護従事者に対する教育」の視点を追加していく。 今後は既に実施した2調査の結果を在宅療養支援プログラム(試案)への活用の視点からさらに分析を深める。また、全国の訪問看護ステーションを対象にしたHIV/AIDSケアの準備状況(具体的な知識面を含む)とそれに関連する要因を明らかにするための全国調査を行う。これらの結果から在宅療養支援プログラム(最終版)を完成させる。
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