本年度は、研究の初年度にあたり、基本的な文献渉猟を行い、インターネット検索を中心に研究を進めた。また、同時に、日本全国の地方自治体を現地調査し、それぞれの自治体において実際に構築されている内部統制の現状についてヒアリング調査と、積極的な資料の収集を行った。その際、内部統制の重要な構成要素の一つである内部監査の現状と課題について、時間をかけてヒアリング等を行った。 わが国の自治体の内部統制実務では、内部監査に実質的に相当する監査は、監査事務局員が行う監査である。しかし、地方自治法上の定めや第29次の地方制度調査会の議論では、監査事務局職員は監査委員の附置職員として位置付けられ、監査委員監査は、今後も一層、外部監査としての機能発揮が求められている。したがって、わが国の地方自治体には、法形式的な内部監査が存在しないことになる。内部統制は、COSO報告書でもモニタリングの一つとして、内部統制の重要な構成要素であると指摘されている。ところが、わが国の法体系では、その内部統制が、規定されていないことになるのである。 今年度の研究では、この点に留意して各種の研究調査を行った。ヒアリングを行った自治体でも、監査事務局監査を内部監査と法形式的に位置づけられていない点については、疑問の声が数多く集約された。自治体関係者が強い問題意識を持つ部分は、当然ながら重要な研究課題となる。次年度も引き続き、この点に焦点を当て、内部統制を構成する内部監査の現状と課題について、報告書を集約する予定である。
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