当年度は、英国の地方自治体における内部統制の現状を調査し、わが国自治体における内部統制の統合的なフレームワーク形成の参考にすべく試みた。当年度は、英国に2回出張し、英国の地方自治体内部統制関係者と積極的に意見交換を行った。英国勅許公共財務会計協会の事務総長や国際部長、国際副部長との協議からは、英国自治体の内部統制において財務管理という概念が重視され、自治体内部統制の中心に位置づけられるのではないかという重要な示唆を得た。また、財務管理の機能を十二分に発揮するために、パブリックガバナンスという発想が存在し、その有用性に注目していくことが大切であるという意義ある理論に関するコメントを入手することができた。英国自治体関係者との協議では、特にタワーハムレット区とデンビシャー県の内部統制管理者から、英国自治体における内部統制の現状を理解するための貴重な実務的資料を閲覧する機会を得た。実務的な資料は、内部統制のツールを構成する部分として非常に重要であり、それらの多くがチェックシート方式で作成されていることを確認できたことは、英国自治体の内部統制実務に関する重要な発見であった。 また、日本国内の地方自治体の業務改善の現状について、メール等を活用して積極的な情報の収集と意見交換を行った。自治体内部統制の有効性とその向上は、一つには、業務の現場における業務改善が中心になると考えられる。この点に関してわが国では、ここ5年間ほどの間に、全国都市改善改革実践事例発表会やKNET(改善ネットワーク)という活動主体が構成されている。今年度も3月2日に大分市で、その第6回全国大会が開催された。そこでは日本全国から20の地方自治体が事例報告を行い、その内容は約1千人の地方自治体関係者によって聴衆されている。ここにいたる自治体の業務改善の取り組みを深く掘り下げて検討することは、わが国地方自治体の内部統制の理論と実務の統合的なフレームワークを形成する上で非常に重要であり、今年度はこの検討にも積極的に取り組み、その研究成果の一部は『地方自治体業務改善』(石原俊彦編著)として集約した。
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