研究概要 |
本研究は、幼児と高齢者の世代間交流を教育プログラムとして捉え、計画的で継続的な世代間交流が特に高齢者の主観的健康度、ひいては「生き甲斐感」、身体活動量にどのような影響を与えるのかを明らかにすることも目的に実施された。さらに認知症の予防・進行の緩和への効果についても踏み込む。またこれまで高齢者だけが一方的に効果があるとされてきた幼老複合施設での異世代間交流であるが、幼児においても、高齢者に対する福祉教育的意義や思いやり形成、あるいは自己抑制・コントロールの習得といった発達が促進されると考えられる。最終的には相互にプラスになるような効果的な方法やプログラムを提案することも目的となった。全国における幼老複合施設(40カ所)を対象にその異世代間交流の実態を明らかにすることを目的に調査を実施し、施設・建築、実施形態、収容人数、担当者人数や日課などを調査した。特に異世代間交流を行っていない施設においては、その理由や職員に対する意識調査も併せて実施し、幼老複合施設の活動プログラムを作成することを目的とした。本研究を通して、高齢者と幼児との交流にはなんらかの意義があること,しかしイベント的な交流のみに偏っており保育者が日常的で自然な交流を望んでいること,その自然な交流が困難となっている原因には施設間の精神的な壁の存在が考えられること,があげられた。そこで,ここまで,今後この施設間の壁をはずし日常的で自然な交流をしていくためには,第3者のコーディネータの介入,建築上の隣接だけでなく職員が自ら作り出す共有された自由な空間の構成,が必要であることが明らかとなった。
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