研究分担者 |
淺野 玄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30377692)
近藤 誠司 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学研究センター, 教授 (20112576)
秦 寛 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学研究センター, 准教授 (30250492)
横山 真弓 兵庫県立大学, 兵庫県森林動物研究センター, 准教授 (50344388)
竹田 謙一 信州大学, 農学部, 准教授 (90324235)
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研究概要 |
平成23年度は,ニホンジカを中心にサンプルサイズを充実させ,研究の最終段階として昨年度までに得た結果の定量的な解析を進めた。加えて,電波発信機や自動撮影装置,目視観察による捕獲時のシカの行動変化の検討についても本格化させた。これらの検索により下記の結果を得ることができた。 1.ストレス評価に有用な血液生化学性状:誘引狙撃法以外の捕獲(巻き狩り,くくり罠等)では,肉体的ストレスを反映するCK,LDH,ASTのいずれかで高値を示し有意差も認められた。そのため,血清コルチゾルに加え,これら3項目の有用性も確認された。 2.血清コルチゾル濃度における詳細:成獣メスの血清コルチゾル濃度(平均値)は,誘引狙撃法で1.99μg/dl,巻き狩りで5.67μg/dl,物理的不動化と化学的不動化の併用で10.39μg/dlと算出された。これらの数値は,ニホンジカにおいてストレス評価を行う上での「標準値」として使用し得ると考えられた。 3.捕獲手法間でストレス評価値の比較:誘引狙撃法がストレスの最も小さい捕獲手法であることが確認された。巻き狩り,くくりワナ,物理的不動化と化学的不動化の併用は,誘引狙撃法に比べてストレスが大きく,これらを適用する際にはストレス軽減のための操作(例:くくり罠の場合は可能な限り早く回収すること)について検討する必要性が示された。 4.誘引狙撃法を適用した際,周辺に林内にいる他個体の行動や警戒心に与える影響は小さく,従来型(犬を使った巻き狩り等)の捕獲のように捕獲未実施地域への移動も確認されなかった。また,捕獲作業を目撃していても顕著な逃走行動を示すことなく,数十分~数時間以内に誘引場所に出没するケースも認められた。これらのことから,誘引狙撃法は捕獲効率を低下させることなく,人道的な高効率捕獲を達成する上で有用性の高い手法であると考えられた。
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