研究概要 |
産科医療における「過剰防衛医療」の実態を明らかにすることを目的に、本年度は人工破膜の実態とその後の転帰について調査を行った。 2箇所の助産所および1箇所の病院における過去の診療録から分娩記録および新生児記録を探索した。 その結果、761の得られたデータは、自然破水群の初産婦が21.2%、経産婦が21.5%、人工破膜群の初産婦が21,5%、経産婦35,8%であった。産歴別の人工破膜の実施率を見ると、初産婦で50.3%、経産婦では62.8%であった。 人工破膜の実施は、初産婦も経産婦も10センチで行われていることが最も多かった。 破水から児娩出までの所要時間は、人工破膜群が自然破水群に比べて、初産婦では53分、経産婦では16分有意に短縮していた。分娩II期の所要時間は、人工破膜群が、自然破水群に比べ、経産婦で5分有意に短縮していた。しかし、分娩所要時間および新生児の予後には、差が認められなかった。 初産婦では、人工破膜ののち「圧出分娩」「圧出分娩および器械分娩」「促進剤の使用」の医療介入を必要としたものが有意に高率であった。 分娩経過が長い初産婦に対して人工破膜を実施することはその後の経過を促進する可能性も存在すりが、それと同時に、人工破膜が更なる医療介入を必要とする誘因となっていた。人工破膜を初産婦に行う際には、その後の胎児心音の異常とそれに対する医療介入を念頭においで慎重に判断するべきであろう。
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