今年度は、昨年度に引き続き、母子世帯の労働と福祉に関する資料収集、特定自治体の母子福祉データの分析を継続する一方、国内外の母子福祉施策とプログラム執行機関に関する調査研究を行った。 国内調査では、これまでの研究において、母子福祉施策や個別プログラムを自治体直営で行うか民間団体に委託して行うかという相違や、委託する場合、委託先は営利団体か非営利団体かといった相違がみられたことから、それぞれ異なる特徴をもつ地方自治体4団体を対象に、母子福祉行政担当課やプログラム執行機関に関するヒアリングや参与観察を行った。結果として、直営方式/委託方式、営利団体委託/非営利団体委託のいずれの方式が効果的かといった傾向はみられず、各地域それぞれ固有の課題や特徴を有していた。委託方式の場合、自治体と委託先との関係があることから、個別プログラムの目的、実施計画、成果指標等が、直営方式よりも明示化されていたが、何をもって成果とするかという点や委託先をどのように決定するかという点で課題もみられた。 外国調査では、海外研究協力者の協力を得て、オランダの母子世帯の労働と福祉に関する関連団体およびプログラム執行機関に対するヒアリング調査を行った。地方自治体の母子福祉担当課から施策の動向や統計資料を入手するとともに、母子世帯の在宅就業、保育、職業訓練にかかわる民間団体を対象として、個別プログラムの内容や現場レベルの課題等を収集した。オランダは女性が働きやすい社会として、ワークライフバランス、1.5稼ぎモデル、パートの均等待遇で注目されているが、母子世帯が仕事と子育てを両立できたとしても、労働市場からの賃金のみで生計を維持するのは不可能であり、また期待もされていないことが明らかとなった。母子世帯の労働を支える社会保障給付の重要性や、賃金と児童扶養手当の関係性を考えるうえで示唆的な資料となった。
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