本研究では、鋼構造建物の1階の柱脚を固定せずに、ある水平力に対してすべる条件にすることで、上部構造に加わる地震力を低減し骨組損傷を抑制する構造形式の開発をめざした。一連の振動台実験では、まず、通常の鋼製柱脚と基礎モルタル間における静止摩擦係数と動摩擦特性を検証した。次に、柱脚の摩擦係数を低減するための鋳鉄製柱脚および黒鉛潤滑柱脚を提案し、これらの静止摩擦係数と動摩擦係数が0.3以下になることを明らかにした。さらに上部構造の損傷を抑制しつつ柱脚のすべり変位を抑制するためのストッパーに必要な条件を検証した。得られた摩擦特性等を組み込んだ建物モデルに対する地震応答解析に基づき、建物としての損傷抑制効果を検証し、実験結果および解析結果を踏まえて耐震性評価手法の構築に取り組んだ。
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