本研究では、分子インテグレーション法を利用した細胞膜外から核内に至る細胞内位置モニタリング材料の創製を目的とする。ここで、モニタリング材料として着目したのが数ナノメートルサイズで直径の差異により蛍光を発し、長期間の露光下においても蛍光安定性を有する量子ドットである。しかし、その表面は疎水基で覆われており細胞培養液中で使用するには表面修飾を行う必要がある。ここでは大きく分けて二種類を検討する。一つは、生体分子が固定化可能な両親媒性のリン脂質ポリマーを用いる表面修飾手法である(A)。もう一つは、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)剤ミセルによる量子ドットの可溶化である(B)。 (A)法に関しては、両親媒性のリン脂質ポリマーを用いる表面修飾手法を用いて、量子ドットを内包し、表面にバイオ分子固定化部位を有する粒子を作製した。固定化部位を保護したリン脂質ポリマー粒子のみでは細胞に取り込まれたいことを確認した上で、種々のペプチドを粒子表面に固定化し、膜透過性を評価した。結果としてオクタアルギニン酸、オクタリジンなど側鎖がカチオン性かつ親水性の構造を有しているペプチドが優れた透過性を示すことを正確に評価することが可能であった。 (B)法に関して、トリチオカルボニル基を有するアルキル鎖長が異なる(C8-16)RAFT剤を合成し、鎖長に応じて量子ドットの可溶化率が異なることを明らかとした。長鎖になるにつれ可溶化率は向上したが、クラフト点が向上し、室温ではRAFT剤自体が析出してくるため中間の鎖長が可溶化には適していると考えられる。ジスルフィド(S-S)結合を用いたRAFT剤合成を目的にしていたが水溶液環境において不安定であり合成や保存等で困難であった。この点は、マイケル付加反応を用いたスルフィド結合を介する新規法により改善し、関連する細胞内位置選択性を同様に検討する。
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