平成22年度は、九州各県の幼稚園・保育所において、保育者の意識調査をインタビュー形式で行うと共に実際の食育内容について観察調査を行った。また、食に関する先駆的な取り組みとしてイタリアのスローフード運動に注目し、現地の幼児教育施設において、幼児教育の中での運動の意義、実践、課題について、保育者へのインタビューと共に活動内容の観察調査を行った。これらの調査において注目した点は、幼児期の食育活動において課題とされている、幼児が行う栽培や調理活動における安全・衛生面の問題とその教育的意義との兼ね合いについてである。調査の結果からは、保育者がどのような意図をもって活動を行っているかが重要であるという点であった。つまり、保育の目的が明確であり、その達成のために綿密に計画・実施された活動であれば、栽培活動や調理活動を行う、行わないに限らず教育的な意義は非常に大きいといえる。 とはいえ、多くの保育者は栽培・調理活動は重要であると捉えており、各地域の特色を活かしたもの、どの地域でも一様に行われているもの等、様々な実践がおこなわれていた。そこで、実際の栽培や調理といった活動がどの程度安全・衛生面で問題があるかについても調査を行った。保育所の調理員が調理したものと、幼児が調理をしたものについて、食品衛生法に基づく一般生菌の数を調べたところ、幼児の調理したものの方が細菌数は多かったものの、安全とされる範囲内であった。 以上の結果を踏まえ、来年度は幼児が行う栽培・調理活動の安全性を確実なものにするための方策について検討し、幼稚園・保育所における効果的な食育実践モデルを提示したい。
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