平成23年度の研究では、幼児教育関連施設における食育実践の一つである野菜・果樹類の栽培と、調理活動について、その教育的意義を再検討するとともに、どのようにしてこれらの食育実践を行えば安全・衛生面の問題を解決できるかを検討した。 これまでの研究結果から、幼児が栽培・調理した食材について、調理員が調理したものと比較して、一般生菌数検査の結果の面から、注意は必要ながら実施は十分可能であることが明らかとなっていた。そこで、福岡県のA保育所に協力を依頼し、A保育所の保育方針を基にした食育実践の中で、調理・栽培活動を安全・衛生面の問題を解決して実施する方法の検討、食育活動の評価方法の検討を行った。 結果から、栽培活動については、活動後の手洗いを十分にする必要性と、食材の水洗い、下処理、異物混入については、調理員が実施する必要性があるといえる。また、調理活動については、活動毎にその直前に手洗い・消毒をすることで衛生面でのリスクを抑えることが可能であった。試食に際しては、十分な加熱と加熱後時間をおかずに試食することで、衛生面における問題は概ね解消されることが明らかとなった。また、食育活動の評価については、栽培・調理活動では、幼児の好き嫌いに大きな影響があるといえることが分かった。一方で、栄養バランスや食文化の伝達については、栽培・調理活動は効果的であるとは言い難い結果であった。 以上の点に配慮した調理・栽培活動は、わが国における幼児の食育実践において、一モデルとなり得る活動であると考えられる。
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